肉の手帖

牛トレーサビリティの仕組みと消費者のメリットについて

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牛の個体識別の結果画面

2019/03/27 追記
記事の追記・修正を行いました。

牛トレーサビリティとは、牛が生まれてから店頭に並ぶまでの履歴を後追いできるシステムです。もともとはBSE(狂牛病)のまん延を防ぐための仕組みですが、購入した牛肉の産地や輸入国を調べることもできるなど、皆さんの普段のお肉選びとも関係が深いです。

今回はそんな牛トレーサビリティについて、詳しくお伝えしたいと思います。

牛トレーサビリティ法が制定された背景

まず牛トレーサビリティ法(正式名称:牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法)が制定された経緯を簡単に見ていきましょう。

この法律はBSE対策の一環で公布・施行されました(※1)

その目的は、牛が生まれてから流通してお店に並ぶまでの行動履歴(異動履歴といいます)を、すべて追跡(トレース)できるようにすること。

そのため法律では、

  • 牛がいつどこで生まれたのか
  • いつどこの農場へ譲られたのか
  • いつどこでと殺されたのか
  • いつ誰が枝肉を購入したのか

こうした情報の届け出や記録・保存が、畜産関係者に義務づけられています。

届け出や記録保存が必要な情報は、以下の図のとおりです。

牛トレーサビリティシステムの全体像
(牛トレーサビリティ法の全体像です)

こうした情報をちゃんと残すことで、牛の生涯を後追いできるようになります。

なぜBSE対策で牛トレーサビリティが必要なのか

それはBSEの性質と関係があります。

BSEには潜伏期間が長いという特徴があります。そのため、たとえば牧場Aで生まれて牧場Bに移った牛から感染が確認されたとしても、感染した場所は牧場Bではなく牧場Aだったということがあり得るのです(※2)

よって感染原因を特定するためには、この牛が生まれてから流通に乗るまでの異動履歴をすべて追跡できなければいけません。

つまり牛トレーサビリティ法とは、この異動履歴をデータベース化するために必要なルールをまとめたものだといえます。

牛の耳標(じひょう)と個体識別番号について

このデータベース化のため、国内で育てられたすべての牛には、必ず「個体識別番号」が与えられます。人でいうマイナンバーです。

牛の耳に名札のようなものがついているのを見たことがないでしょうか。あれは耳標(じひょう)といって、あそこに個体識別番号が記載されています。

褐毛和種の牛たち

耳標は牛が生まれたとき、または輸入されたときに、その報告を受けた家畜改良事業団という組織から牛の管理者(農家や輸入業者など)へ配布されます。

すべての牛の管理者には、牛の異動が発生するたびに、家畜改良センターにその旨を通達する義務があります。このとき必ず個体識別番号も一緒に届け出なければなりません。「この個体識別番号の牛を佐藤さんの牧場に譲りました」「この個体識別番号の牛をうちの施設でと畜しました」のように連絡するわけですね。

そして同センターは、届け出の内容を、この個体識別番号に紐づけてデータベース化していきます。こうして1頭1頭の牛の異動履歴が漏れなく管理できるようになるわけです。

牛の個体識別情報の届け出の流れ
(データベースに登録された情報は、後ほどご紹介する専用サイトを通じて消費者にも公開されています)

ちなみに、この耳標は基本的に外してはいけません(※3)。個体識別番号がわからなくなると、牛の識別が不可能になってしまうからです。また耳標は両耳につける必要があり、片耳でも外れてしまったら、すぐ再発行申請を行わなければいけません(※4)

牛を育てた方の氏名や、と畜した施設を調べられる

こうして集まった牛たちの異動履歴は、消費者の皆さんも知ることができます。

家畜改良センターは「牛の個体識別情報検索サービス」というウェブサイトを運営しており、こうした情報を誰でも閲覧できるようにしています。

牛の個体識別情報検索サービスのホームページ
独立行政法人家畜改良センター「牛の個体識別情報検索サービス」より引用)

こちらがサイト画面(PC版)です。ここから「個体識別番号の検索」というメニューをクリックします。

すると利用規約の画面に移ります。そちらに同意して先に進むと次のページが表示されます。

牛の個体識別情報の検索画面
独立行政法人家畜改良センター「牛の個体識別情報検索サービス」より引用)

このページの検索窓に、購入した牛肉のラベルにある個体識別番号を打ちこんで「検索」ボタンをクリックすると、その牛の異動履歴を閲覧できます。

牛の個体識別の結果画面

独立行政法人家畜改良センター「牛の個体識別情報検索サービス」より引用)

画像ではモザイクにしていますが、ご覧のように、牛を育てた方の氏名やと畜した施設の名前などがわかります。ただし、生産者名は個人情報のため、ご本人の同意がない場合は空欄となります。

銘柄牛ごとに用意された独自のトレーサビリティ制

銘柄牛(ブランド牛)を管理する団体によっては、独自にトレーサビリティ制度を用意しているところがあります。いくつかご紹介します。

松阪牛®の場合

松阪牛®には、株式会社三重県松阪食肉公社が運営する「松阪牛個体識別管理システム」という仕組みがあります。これは松阪牛®専用のトレーサビリティ制度で、このシステムに牛の情報を登録していなければ、松阪牛®とは認められません(※5)

松阪牛®トレーサビリティシステムのトップページ
株式会社三重県松阪食肉公社のホームページより引用)

このシステムの特徴は、生産者の方の写真や牛が食べたエサ、さらにと畜されたお肉(枝肉)を購入した事業者の名前などがわかる点です。

特にエサは、牛の健康や牛肉の味と密接な関係があります。またBSEの原因となったのは、肉骨粉というエサでした。そうした点を踏まえると、牛の食べたエサまで分かるのは消費者にとってありがたいですね。

神戸ビーフ®・但馬牛®の場合

神戸ビーフ®と但馬牛®にも、独自のトレーサビリティ制度があります。それが「但馬牛血統証明システム」です。

但馬牛®トレーサビリティシステムのトップページ
神戸肉流通推進協議会のホームページより引用)

同システムで特徴的なのは、3代前(曽祖父・曽祖母)までの血統が確認できる点です。このおかげで、購入したお肉が本当に神戸ビーフ®・但馬牛®なのかを、誰でも確認することができます(ただ、血統についてある程度の理解がないと難しいです)

近江牛®の場合

近江牛®も「認定近江牛検索」というシステムを設けています。これは「近江牛」生産・流通推進協議会が運営しています。

近江牛®トレーサビリティシステムのトップページ
「近江牛」生産・流通推進協議会のホームページより引用)

同システムで個体識別番号を検索すると、web版の認定証が表示され、生産者の氏名や格付けなどが確認できます。

なかでも特徴的なのは、生産者のホームページURLが記載されている点です。ホームページには、農家の皆さんの牛に対する思いや、育て方に対する考え方などが掲載されていることも多く、牛がどんなふうに育てられたのかを知ることができます。

このように、消費者の皆さんに少しでも安心して牛肉を楽しんでいただくために、業界ではさまざまな努力が行われています。ぜひ有効に活用してみてください。

参照・引用

商標

  • 「松阪牛®」は、松阪肉事業協同組合の登録商標です。
  • 「神戸ビーフ®」「神戸牛®」は、兵庫県食肉事業協同組合連合会の登録商標です。
  • 「但馬牛®」は、たじま農業協同組合と兵庫県食肉事業協同組合連合会の登録商標です。
  • 「近江牛®」は、滋賀県食肉事業協同組合の登録商標です。
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