肉の手帖

外国生まれの牛も「国産牛」と表示できる。国産の定義を理解しよう。

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牛肉のラベル表示サンプル

牛肉を購入するとき「国産牛」かどうかラベルをチェックされる方も多いと思います。ですが、ラベルに「国産」とあっても、ずっと日本で育てられた牛のお肉とは限りません。

記事執筆時点でのルールでは、その牛が最も長い時間を過ごした(飼養された)場所が原産地となります。この牛のお肉が店頭に並ぶとき、商品ラベルには「国産牛肉」という表示が記載されます。

今回は「国産牛」がどういう牛なのか、お伝えしたいと思います。

国産牛とは「日本での飼養期間が最も長い牛」のこと

まず国産牛の定義から見ていきましょう。

国産の定義は、食品表示法に基づいて定められた食品表示基準によって、次のように決まっています。

国産品(国内における飼養期間が外国における飼養期間(二以上の外国において飼養された場合には、それぞれの国における飼養期間。以下同じ。)より短い家畜を国内でと畜して生産したものを除く。)にあっては国産である旨を、輸入品(国内における飼養期間が外国における飼養期間より短い家畜を国内でと畜して生産したものを含む。)にあっては原産国名(二以上の外国において飼養された場合には、飼養期間が最も長い国の国名)を表示する。

(食品表示基準 第18条 第1項 第2号のイより)

簡単にいえば「最も長く飼養された地域が日本である牛を国産牛とする」ということです(飼養とは牛を育てることです)

アメリカで生まれて6ヵ月を同地で過ごし、そのあと日本へやってきて14ヵ月を過ごした20ヵ月齢(生後20ヵ月)の牛がいるとしましょう。この牛は日本での飼養期間が最も長いため、牛肉として販売されるときはラベルに「国産牛肉」と表示されます。

牛肉のラベル表示サンプルちなみに飼養期間が同じ場合は、最後に飼養された地域がラベルに表示されます。

 

では、オーストラリアで3ヵ月、アメリカで6ヵ月、日本で8ヵ月、育てられた牛がいたとしましょう。
この牛は海外で9ヵ月、日本で8ヵ月、暮らしてきたことになりますが、先の基準に従うと、定義上は国産牛となります。

このように「国産」の定義は、言葉どおりの「日本で産まれたこと」ではありません。「最も長く育てられた地域が日本の牛」である点に注意しましょう。

国産牛の場合、銘柄名のみの表示でも問題はない

商品ラベルには「熊本県産」「鹿児島産」といった都道府県名が書かれていることもあれば、銘柄名(ブランド名)のみが表示されている場合もあります。

これもまた食品表示基準によって定められているルールによります。

ただし、国産品にあっては主たる飼養地が属する都道府県名、市町村名その他一般に知られている地名をもってこれに代えることができる。

(食品表示基準 第18条 第1項 第2号のイより)

たとえば松阪牛©などの銘柄牛は、地名が銘柄名の中に入っているので「国産」と書かなくても良いということです。なお、このルールは国産に該当する牛肉のみに限って適用されます。

ただし、その銘柄牛が、銘柄名の中にある地名(松阪牛©の場合は三重県松阪市)と異なる場所で最も長く飼養されていた場合は、そちらの地名も併記しなければなりません。

国産品に主たる飼養地が属する都道府県と異なる都道府県に属する地名を表示するときは、当該地名のほか、主たる飼養地が属する都道府県名、市町村名その他一般に知られている地名を原産地として表示しなければならない。

(食品表示基準 第18条 第1項 第2号のロより)

この条文の冒頭にある「主たる飼養地が属する都道府県」が、最も飼養期間の長かった地域で、「(そこと)異なる都道府県に属する地名」というのが、銘柄名に入っている地域にあたります。

個体識別番号によるトレーサビリティで「主たる飼養地」はわかる

日本国内を流通する牛肉には、必ず「個体識別番号」という10桁の数字が割り振られます。これはBSE対策として始まった牛トレーサビリティ法(牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法)によって決められているルールです。

1 農林水産大臣は、前条の規定による届出を受理したときは、当該届出に係る牛の個体識別番号を決定し、遅滞なく、農林水産省令で定めるところにより、これを当該届出をした牛の管理者又は輸入者に通知するものとする。

2 牛の管理者又は輸入者は、前項の規定による通知を受けたときは、農林水産省令で定めるところにより、牛の両耳にその個体識別番号を表示した耳標(農林水産省令で定める規格に適合するものに限る。以下同じ。)を着けなければならない。

(牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法 第9条より)

そしてこの個体識別番号を、家畜改良センターという機関が運営するウェブサイト「牛の個体識別情報検索サービス」で検索すると、その牛が最も長く飼養された地域がわかります。

牛の個体識別情報検索サービスのホームページ独立行政法人家畜改良センター「牛の個体識別情報検索サービス」より)

こちらの画面の上にある「個体識別番号の検索」をクリックして、表示された検索窓に購入してきた牛肉のラベルに記載されている個体識別番号(10桁の数字)を入力します。

すると、下の画像のような画面が表示されます(画像はサンプルです)

牛の個体識別情報の検索結果サンプル

ここで図表の左から3列目「異動年月日」を見てみましょう。

この牛は2017年11月20日、山田太郎さんの牧場で誕生しました。そして約9ヵ月後、市場で鈴木一郎さんに購入されます。その後、鈴木さんの牧場で約2年ほど飼養され、と畜場へ搬入されました(このあと食肉として販売されます)

よってこの牛が最も長く飼養されたのは、鈴木さんの牧場がある「渋谷区」となります。

 

もし仮に、この牛肉の商品ラベルに「兵庫県産」「鹿児島県産」といった東京以外の都道府県や、渋谷区以外の都内の市区町村名が記載されていたとしましょう。この表示は、悲しいことですが偽りということになります。商品ラベルには、最も長く飼養された都道府県名を記載しなければならないからです。

このように、個体識別番号で牛の情報を調べることで、ラベルの表示が正しいかどうかを誰でも簡単に知ることができます。

もちろん畜産に関わる皆さんは、消費者の方々に安全安心に牛肉を楽しんでいただくため、こうした点に十分な注意を払っています。そのため食い違うことはまずありません。

 

ちなみに、輸入牛は輸入国が表示されます。

輸入牛を牛トレーサビリティで調べた結果画面
日本家畜輸出入協議会「輸入牛のトレーサビリティ制度について」独立行政法人家畜改良センター「牛の個体識別情報検索サービス」より引用)

国産牛が外国産のエサで育てられていることは一般的にあり得る

もう1点、国産牛について覚えておいていただきたいことがあります。それは、外国産のエサを食べて育っている国産牛もたくさんいるということです。

肉牛(食肉となる牛)の一般的な育て方は、最初にワラや牧草などの粗飼料を与え、その後にとうもろこしや麦などの濃厚飼料を与えていくというものです。これによって適度な脂肪(サシ、霜降り)が入った牛肉となります(肉牛はサシが入っているお肉のほうが需要があるため、きれいな脂肪が入る育て方を採用する農家さんが多いです)

この濃厚飼料としてよく使用されるのが「とうもろこし」(正確には飼料用の穀物とうもろこし)で、日本はそのすべてを輸入に頼っています。国内ではいっさい生産していません(※1)

そして(少し古いデータですが)農林水産省によれば、2011年度に使用された肉牛用の粗飼料と濃厚飼料の割合を比較すると、実に89.2パーセントを濃厚飼料が占めていました(※2)

また、牛のエサのうち配合飼料・混合飼料(いろんな作物を混ぜ合わせたエサです)に使われている原料の実に40パーセント近くを、このとうもろこしが占めています(※3)

つまり、国内で育てられている肉牛の多くは、外国産のとうもろこしを食べていることになります。そのため、表示の上では「国産牛」でも、食べていたエサまで国産かというと必ずしもそうではありません。

この点について以下の記事で詳しくお伝えしているので、よろしければそちらも併せてご覧ください。

国産牛もエサの多くは外国産。輸入飼料の安全性について。

 

このように「国産牛肉」という表示は「国内で生まれた牛が、国産のエサだけを食べて育った牛のお肉」という意味ではありません。少し紛らわしいので気をつけてください。

もちろん外国のエサも、各事業者さんが安全面で問題ないものを輸入されているので、ご安心ください。

ぜひ日頃のお肉えらびの参考にしていただければと思います。

参照・引用

※1:World Agricultural Supply and Demand Estimates|USDA
※2:食料・農業・農村政策審議会畜産部会  平成26年度第4回部会 – 資料3:本格的議論のための飼料の課題|農林水産省
※3:流通飼料価格等実態調査<速報版>|農林水産省、配合飼料供給安定機構

商標

※「松阪牛©」は、松阪肉事業協同組合の登録商標です。

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